出版について考えてみるブログ/ Considering 'Publishing' on this blog.
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インドに半年ばかり滞在して、多少ではありますが、インドの出版事情について感じたことを書きとめたいと思います。
まず、印刷・DTP関係 欧米出版社からのアウトソーシングがあるせいか、印刷業自体は活発なような気がします(あくまでも雰囲気です)。 DTP制作も盛んにやっていると思います(日本語DTPは指示やフォントの問題でなかなか大変ですが)が、紙の質が非常に悪く、ついでに印刷技術も悪いため、印刷のクオリティーがかなり低いように思います。すぐに印刷が劣化します。 また、DTPも緻密なものは向いていません。そもそもインド人は精密なことが苦手なようで、美しいレイアウト、きちんとした配置などに気を使うということはありません。なんでもチャレガー(No problem)なんでしょうか? そしてインドの書店 インドの書店数はさほど多くなく、フロア面積も諸外国のようにさほど大型化していません。大型チェーンではCross Wordが一番有名です。諸外国と同様に本だけでなくCDやDVDも販売しています。 本の価格は欧米や日本とさほどかわりません。つまり、インド人にとっては大変高級なものと言えます。 しかし、一番問題なのは、書店の中を探索するとすぐに気づきますが、まず、本をお客様に提供しようという意思が感じられません(これはほかのサービス産業でも同じなのですが)。つまり、棚の並べ方がぐちゃぐちゃです。 アルファベット順に並べられていないことは当たり前、分類なんて考えない、さらにひどいのは本を積み上げたまま背を見せて並べていることです。 もし目的の本があった場合、本の山が崩れ落ちてくる可能性があります。横文字だから背にあるタイトルは横向きに見せたほうがいいと考えているのか、たんに面倒だから積み上げてるのか知りませんが、アルファベット順もでたらめ、本を取るのも大変、これじゃあ購買意欲は簡単にそがれます。 最近では普通に立てて並べている書店もちらほらありますが、内装だけは欧米書店のまねをしているものの雑然とした感じは変わりありません。 インドの出版文化とは 書店をブラウジングして敢えて考えないと気づかないことですが、まず、並べられているのは英語の本ばかりです。欧米の本屋を見慣れていると普通のことのように思えてしまいますが、これはおかしいですよね? インドの公用語はヒンディー語です。英語は第二外国語ですが、インド人全員が話せるわけではありません。2001年の国勢調査ではインドの識字率は64.8%だそうで、このうち英語の読み書きができる人がどれくらいいるのか定かではありませんが、予想するにこのうちの10%前後くらいではないでしょうか。 さらに、本が高価であるという点を考えると、英語の読み書きができ、本を買えることが富裕層であるというステイタスシンボルになっている可能性はあります。 実際周りのインド人をみていても、ヒンディー語の書物を読んでいる人はいません。彼らはあまり人前(特に外国人の前)ではヒンディー語をしゃべりたがらないように感じます。 また、インド人にとって一番重要なメディアはまずテレビ、新聞*、携帯電話、インターネット、最後に本・雑誌という気がします。街中でも本や雑誌を手に持ったインド人をほとんどみかけません。 さらに、読み書きという点だけ考えると、ヒンディー語のような複雑な書体を使うより、単純なアルファベットのほうが楽なのかもしれません。私の隣の席の高等教育を受けたE女史は、私にヒンディー語の数字を教える際、「8」の書体を忘れてました。 また、彼らにとって、ヒンディー語は公用語ではるものの万能ではないとうこともあるかもしれません。なぜなら私の住むムンバイではマラティー語という地方言語があり、そちらのほうがヒンディー語よりも得意な人はたくさんいます。へたをするとヒンディー語での会話がうまく伝わらないようなことも起こり得るそうです。 さらに、インドの書店に並ぶ書籍はほとんどが輸入物、もしくは欧米出版社のインド支店が出版しているものばかりです。そして、インド人小説家もヒンディー語で小説を書くのではなく、ほとんど英語で書いています。日本の出版業界は輸出入という観点からみると、完全に輸入大国ですが、インドの出版業界はコンテンツそのものからして輸入超過のようです。 これを考えると、今後インドが自国の言語を放棄して自国文化を醸成できるのか、はたして疑問です。経済発展著しいインドも経済が安定してくれば、自国文化について考えざるを得ないときが必ずくると思います。そのとき、この現状のまま突き進めば、何か歪みが生じないのでしょうか? 日本の出版文化も大衆向けに円本ブームが起きて活発になりました。インドの出版文化は今、英語が話せる富裕層のための特権となっています。国民総中流階級と言われた日本と比較しても意味がないのかもしれませんが、欧米をみても、たとえ産業自体が小さくても活字文化が一般市民・政治・経済・文化すべてに与えるインパクトは非常に大きいと思います。 今後インドの識字率も上がるでしょうし、そうなったときインドが自国活字文化についてどう考え、どう行動を取るのか、国としてきちんとアイデンティティーを考えるのか、大変興味深い問題だと思います。そして経済発展のための拝金主義=インドを払拭できるのか。 出版業界の人間としてこの課題についてはしばらく見守っていきたいと思います。 *IT国家と言われるインドですが、インターネットの家庭普及率はまだまだで、現在は紙の新聞が爆発的に人気なようです。もともとデリバリー文化があるインドでは日本のように新聞配達も普及しています。価格も非常に安く、1ヶ月140Rs(約400円)程度。テレビの次に人気のメディアと言えるでしょう。新聞が果たす識字率向上にも期待したいと思います。 #
by u_poko_intern
| 2008-04-04 20:38
| World Publishing
この事件に胸を痛めずいられるだろうか?
ましてや出版業界の人間として。。。 しかも地元文京区での事件だし。 無理心中の男逮捕へ 東京・文京区の一家殺傷 出版不況でいちばん被害をこうむっているのは製本業の方々でしょう。 もともと儲かる仕事でもなく、薄利多売でやっていかねばならなかったはず。 それが長引く出版不況で薄利多売も無理となり、、、 悲しい話ばかりですね。 もう「出版業界」という枠は考えないほうがいいのかな? #
by u_poko_intern
| 2008-04-04 12:10
| 日本の出版
久しぶりなのに悲しい話。人ごととは思えません。。。
アスコム倒産騒動 止まらない深刻な出版不況 2月26日9時30分配信 MONEYzine あのアスキーの書籍部門でさえだめか。。。 今後、紙媒体のメディアは無くならないにせよ、縮小は間違いないですね。 さて紙媒体の編集の人間としてどうすべきなんでしょうか? 個人的には出版業界を盛り立てたい気持ちもありつつ、メディア全体を捕らえて今後は考えていきたいと思います。 ちょっといろいろやってみる。 #
by u_poko_intern
| 2008-03-02 22:19
| 日本の出版
随分久しぶりです、東京のブックフェア。
会期:2007年7月5日(木)〜8日(日)。5,6日は業界向け、7,8日は一般参加。 ブックフェアのイメージはすっかりロンドンのそれになっているので、というか、必死に課題をこなすために隈無く見たから、いまだ目に焼き付いている、と言った方が正しいかも。 まず、シンポジウムがいろいろあって、有料だった。 あれ?ロンドンブックフェアのシンポって有料だったけ? 学生だったからタダだったのか?! ロンドンで散財した貧乏な私は、無料のシンポジウムだけに参加。 7日土曜午前の「書店に未来はあるのか!—大型書店から街の本屋まで、激変期の書店経営者が徹底討論」に出てみる。 パネリストは地方で大型店舗展開している経営者1名、地方でそこそこチェーンを持っている経営者2名、そしてTUTAYAの人。 まず、前置きが長くって、せっかくの本題の時間が少なくて残念でした。 小規模・地方書店経営者の熱い思いというのはわかるけれど、せっかく討論できるよい機会なのにね。。。 そして、大規模店舗展開が悪玉のような話の運びに疑問を感じました。 正味下げるとか、具体的な提案もあったけど、大規模書店やブックオフが悪いとか、出版社が儲けてるとか常に悪い者探しをしているようで、ベクトルが読者に向いていない気がしました。 読者の消費動向は間違いなく変化しています。 まず、なんやかんや言って、一番の大きな問題は、日本人のモノに対するお金の使い方が変わったことです。昔は本は高価だけど買うことに意味があった。今はネットがタダだから本が高く感じる。同じ「高価」でも意味が違います。悲しい話しだけど。 ただ一方で、出版業界自身もすでに市場原理の中に組み込まれてしまった。取次という日本独自の存在に左右され、自分たちで努力してこなかった。ちょっと違った者が出てくると、村八分。非常に狭量、閉鎖的な業界なんだもの。読者ばかりをせめられません。 ※TUTAYAさんが、読者を消費者、本を商品と平然と言っていたのは、無意識なのか、挑発なのか?? なんか引っかかったのすが。。。 ちょっと嬉しいことに、今年の来場者数は前年比増なそうな。 初日1万4259人、 2日目1万2845人、 3日目1万4589人、 4日目1万4250人だった。 4日間で5万6000人 昨年と比べ約1500人増加した。 数字は天才工場さんのメルマガより引用させていただきました。 確かに以前よりも活気があったような気がします。 ただ、活気があったのは、GoogleとAdobe、子供が遊べるのブースだったような気も。。。 全日行ってないからなんとも言えないけどね! とにかく、出版社には、 粗悪品の刊行点数ばかり増やして、薄利多売、自転車操業するのはやめましょー。自立・自律が大切です。結局は自分で自分の首を絞めることになります! と言いたい。モノ言うのは身内だけにしておきます。 あー、しかしうちの会社ではブックフェアの「ブ」の字も出なかった! もちろん出展なんてしてませーん。悲しい。。。べつにフェアが全てじゃないからいいんだけどね。。。やっぱり、本の製造工場みたいな会社だわ。。。 後輩が、 「そういえば書籍のイベントみないたのが先週くらいにあったんでしたっけ? あれって何やるんっすか?」 と訊いてきたのに愕然としました。 あんた、何年この業界にいるねーん!! と突っ込みたかったけどね、でも、会社の人間全体がそんな感じだもんね、仕方ないよね。。。 #
by u_poko_intern
| 2007-07-17 20:14
| 日本の出版
出版ビジネススクールのセミナーに参加してきました。
以前から感じていたこと、紙媒体vs.Web媒体という考え方をする必要はない、というのが明確になりました。 つまり、紙媒体活性化のためには、双方向性のあるWeb媒体を使って読者を取り込み、購読者数を増やすことができる、ということです。これって医学雑誌にも使えるよなあ、と夢膨らみ。 現時点では、SNSもありますが、やっぱりブログ・パワーは大きいのかな、と思います。すでにブロガーという経験を活かして、今後この手のこともやりたい! でも、そういった話題が欧米ビジネス雑誌に普通に掲載されていることが、日本との大きな違いだなあ、とも思いました。今度からビジネス雑誌もチェックします。 私の今の会社、かなりIT強い出版社のはずなのに、そんな話題は全く聞かれず、自分のまわりの編集者だって、そんな話に乗ってくる人って少ない。 編集者って編集という仕事を「編集」という職種としては意識していても、「出版ビジネス」という見方をする人が少ない。そういうことは経営者に任せておけばいいんじゃい、みたいな考えって多いかも。 それって、どうかな? このままでいられるとも思えない。インターネットの普及は活版印刷発明以来の大革命だと思っている私にとって、その変化のスピードを考えるとWebについて考えずにはいられないのですが。。。 今回参加費8,000円。自腹で払うにはきつい。 回りをみればおそらく皆さん会社持ちで来てる方が多いと思われます。 もう少し個人参加が多くてもいいのになあ、と英国大学院時代を思うと不思議な感じがしました。 某大手出版社の新入社員たちが格好はキメキメだったけど、目に輝きがなかったという話をもありました。 うーん、出版業界大丈夫なのだろうか?と考えずにはいられなかったのだけど、それって余計なことなのだろうか? 8月のセミナーにも参加予定です! #
by u_poko_intern
| 2007-07-04 00:26
| 日本の出版
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